2024年に刷新された新NISA(少額投資非課税制度)は、多くの人にとって魅力的な投資口座です。最近は猫も杓子も新NISAに注目が集まっていて、理解しないまま投資を始めて株価の暴落を嘆くSNSでの投稿も散見されます。新NISAは誰にとって本当に向いているのか、あるいは向いていないのかを理解することはとても重要です。本記事では、新NISAがどのような人に向いているのか、向いていないのかを詳しく解説します。これから新NISAを始めようとしている人も、すでに新NISAを始めている人も、自分の投資スタイルに合った最適な選択を見つけるための参考にしてください。
1: 新NISAとは?
新NISAは、特定の非課税投資枠を設けることで、投資による利益に対して税金がかからないようにする制度です。日本政府が投資を促進するために導入したこの制度は、長期的な資産形成を目指す人々に適しているとされています。ここでは、新NISAの基本的な仕組みやメリットについて簡単に説明します。
新NISAとは
新NISAは2014年から始まった一般NISA制度、2018年に始まったつみたてNISA制度の後継としてあらたに生まれ変わりました。一言で言うと、一般NISAとつみたてNISAが併用できる制度となりました。投資期間が無期限になり、投資枠が拡大され、貯蓄から投資への流れを推進する役目を担っていると考えられます。一般NISAに相当する枠は、成長投資枠という名称に変更となり、つみたてNISAに相当する枠はつみたて投資枠という名称になっています。
新NISAの基本
新NISAは長期投資を目的として株式や投資信託にお金が集まるような仕組みになっています。また、素人向きでないハイリスクで仕組みの複雑な投資信託には投資できないようになっています。他にも、安定的な投資先である預貯金や債券には投資ができないようになっています。
投資信託においてはローリスク・ローリターン、ミドルリスク・ミドルリターン、ハイリスク・ハイリターンいずれの投資信託も購入することができますが、デリバティブを組み込んだレバレッジ型の商品やベア型といって値下がり時に利益がでるような特殊な商品は投資できません。あくまでも、買って、いつか売る、ことを前提としたラインナップです。
つみたて投資枠では、低コストのインデックス投資信託を中心として、低コストのアクティブ投資信託も購入することができます。
成長投資枠では、個別株式、ETF(上場投資信託)、公募投資信託を購入することができます。たとえば、高配当株式や高配当ETFに投資したい場合は、成長投資枠でないと購入することができません。公募投資信託はアクティブ型から優良ファンドを選びたい場合は、成長投資枠から選定することになります。
つみたて投資枠、成長投資枠ともに、証券会社によって商品の取扱いラインナップが異なります。ネット証券会社は取扱いが充実しているかわりに、自分で情報収集や意思決定が必要です。対面証券会社では、ラインナップが絞り込まれ、担当者に相談しながら銘柄を選びやすくなっています。一般に、6種類を超えると人は選ぶことを諦めてしまうともいわれています。種類が多いにことは理想ですが、多いからいいということでもなく、投資する人にとって使い勝手がよいかどうかが大切です。
新NISAの概要
おもに、投資期間が無期限になり、意思能力があれば一生使えることになりました。認知症や加齢による認知機能の低下に注意する必要があるでしょう。
投資額が一般NISA600万円、つみたてNISA800万円よりも大幅に増えて、総額1800万円になりました。一説によると、老後資金2000万円問題を解消するために2000万円に近づけたそうです。
一年間の投資可能枠が増えました。旧NISAでは一般NISAは120万円、つみたてNISAでは40万円が年間の投資上限でした。新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠の併用が認められ年間最大で360万円の投資が可能となり、最短5年で投資枠を消化することもできるようになりました。
ジュニアNISAは終了したため、子どもや孫のためにNISAを利用することができなくなりました。贈与された資金を投資したい人には残念な変更です。
2: 新NISAが向いている人
次に、新NISAが向いている人の特徴を解説します。特に以下のような人々に適していると言えます。
- 長期的な資産形成を目指す人
新NISAは長期投資を前提として投資の支援制度です。株式投資は長期で取り組むことで、リターン(期待利回り)を恒常的に獲得し、リスク(価格変動)を最小化することができます。投資理論に基づくリターンとリターンの最適化が長期投資のメリットであるため、積立による時間分散や銘柄や資産分散投資でリスクを抑えながら資産を増やしたい人に向いています。
- 税金を節約したい人
NISAの最大のメリットは、投資による利益が非課税になること。これにより、配当金や売却益に対する税金を抑えることができます。新NISAは非課税という言葉にピンと来た人、非課税で利益を最大化したい人に向いて言います。
- 投資初心者で経験を積みたい人
新NISAのつみたて投資枠では、金融庁の基準で選定した投資信託のうち、証券会社が取扱い登録した投資信託を購入する仕組みとなっています。そのため、銘柄選びが難しい初心者がリスクを抑えつつ、投資の体験を重ねることに適した制度です。
- 投資を理論的に勉強したい人
新NISAは非課税枠という新しい枠組みであり、従来の証券投資のように、利益と損失を相殺する損益通算や赤字の繰越など税制の学びを必要としません。これは、税務の知識を必要としない画期的な仕組みと言えます。
一方で、投資商品が一定の条件に基づき選定されているため、どのようなロジックで選ばれているかを学ぶことで投資に関する知見が深まります。また、インデックスファンドとアクティブファンド両方に投資することで、両社のパフォーマンスの違いやコストの違いを学習するきっかけになります。
- 少額から投資したい人
新NISAでは少額での投資が可能です。従来の特定口座や一般口座での少額での投資はできるのですが、投資信託は証券会社によって100円や1000円単位での購入が可能です。個別株式は1株単位で購入なら数百円から数千円での購入が可能です。手元資金があまりないが投資を始めてみたいという若者のニーズにあった投資制度と言えそうです。
- 老後資金を準備したい人
新NISAは長期投資を想定した投資の枠組みです。老後資金をつみたて投資や証券投資をを通じて準備したい人に向いていると言えます。
- つみたて投資を始めたい人
新NISAはつみたて投資枠では積み立て投資が前提です。成長投資枠でもつみたて投資を行うことができます。つみたて投資のメリットは時間分散により、高値掴みを避けること、値下がり局面では安値で量を買えることです。まとまった資金の一括投資がこわいと感じる人はつみたて投資から始めるといいでしょう。
- リスクを分散したい人
投資におけるリスクの多くは①価格変動リスク、②為替変動リスクです。新NISAは投資信託を購入する利用方式が多いため、価格変動リスクを受入れる必要はありますが、個別株式と比べて銘柄が分散されているため、個別株式よりも価格変動リスクを抑えることができます。また、日本株式を主体とする株式投資信託であれば、為替レートの変動による間接的な株価への影響を受けることはありますが、円建てでの投資となるため直接的に為替変動リスクを許容する必要はありません。
- 安定した収入がある人
新NISAは積立投資の平均額が3万円程度と言われており、20代から40代までの勤労世帯が主な利用者層と考えられます。積み立てを長期間継続するには、安定した収入の確保が必要です。手元の資金はそれほど多くなくても、毎月の安定的な収入の一部を長期的に投資し続けることで、資産の成長を促せる可能性があります。
- まとまった資金がある人
実は新NISAで高額の積み立てを実施している人の多くは、収入からの積立てではなく、預貯金や他の金融資産からの預け替えではないかと言われています。資産の一部を積極的に新NISAに移して投資することで、非課税枠を確保することを主な目的としたい人に新NISAは適していると言えます。
3: 新NISAが向いていない人
人気の新NISAですが実は向いていない人もいます。新NISAが向いてない人の特徴も理解しておくことは、自分が当てはまっていないかの確認も含めてとても重要です。以下のような人には、新NISAはあまり適していないかもしれません。
- 短期的な利益を求める人
新NISAは長期投資向けの制度であり、短期間での売買を繰り返す人には非課税メリットを十分に活用できません。特に、年間の投資枠が限られているため、一度売却すると金額によっては投資枠の回復を翌年まで待機する必要があります。よほど投資が上手な人でなければ、新NISAでの短期売買で利益を出すことは難しいでしょう。
- 投資リスクを避けたい人
投資に伴うリスクを避けたいと考える人には、新NISAのような制度は不安要素が大きいかもしれません。そもそも値下りがNGだと考えると、選択肢は預貯金、個人向け国債のいずれかしかありません。絶対に値下りはイヤ!そう考える人にNISAは向きません。
- 近い将来に資金が必要な人
長期的な資金運用を前提としているため、数年以内にお金が必要になる予定がある人には向いていません。新NISAは投資信託で主に運用する制度です。積み立ての場合、損失が大きくなりづらいというメリットはありますが、絶対に利益が出るという保証はありません。お金を使いたいと思ったら値下がりして困ってしまう、そのような事態を避けるために資金使途が確定して、資金の必要な時期が決まっている場合は、新NISAでの投資は避けた方が良さそうです。
- 安定した収入が無い人
長期投資が前提の新NISAは投資した資金をすぐに売却して換金するような投資スタイルには合いません。そのため、収入がない状態や収入が不安定な状態での投資は不適と言えるでしょう。証券会社やIFAなどのサポートが付いている場合は、リスク許容度や適合性の原則から投資を控えるようアドバイス・助言があるはずです。しかし相談相手がいない場合、一人で新NISAに取組んで虎の子の資金を新NISAに投じる人が少なからずいます。価格上昇局面では気になりませんが、日銀ショックのような暴落の際に、多いに困ることになったのではないでしょうか。安定した収入がなく、かつ余裕資金もない人には新NISAは向いていません。
- まとまった余裕資金が無い人
まとまった余裕資金が無い人は、新NISAは向きません。安定収入があれば状況は変わりますが、ある程度の投資余力があり、資金が必要になった時に新NISAの買付銘柄を売却せずにすむような、余裕資金が手元に無い人は新NISAは向いていません。
- 決まった資金使途がある人
数年後の子どもの教育資金、マイホームの頭金、自動車の買い替え資金など3~5年以内に資金が必要になることがあらかじめわかっている資金は新NISAには向いていません。相場が下落するタイミング、回復するタイミングがわからない以上、短期での運用は新NISAと言えども向いていません。
- 高齢の人
新NISAで主につみたて投資枠を利用したいと考える人もいますが、つみたて投資は一括投資と比べてお金の増え方が遅くなります。同じ利回りだと仮定した場合、一括投資よりもつみたて投資の方が、1.75倍時間がかかります。わかりやすく2倍時間がかかると覚えておくといいでしょう。高齢の人は、何のために新NISAをはじめるのか、理由を明確にしておくといいでしょう。新NISAである必要はないことを発見できるかもしれません。
- 投資について理解が乏しい人
値下りはイヤ、投資は怖い、そんな風に考えている人は、新NISAだけでなく投資そのものが向いていません。投資は好きな人だけやるべきもので、キライな人は取り組む必要はありません。
- 新NISAなら損しないと誤解している人
かなり多い誤解です。2012年末のアベノミクスから2024年7月までの、比較的長期の右肩上がりの相場だけみていると投資で損は出ないだろうと感じる若者がいることは理解できます。しかし、40代以上の人たちは投資は損が出ることを前提に取り組むべきものだと経験則から学んでいます。つまり、新NISAであっても相場常用次第で損失が発生することがあります。新NISAなら損しないと考えている人は、理解が不十分であり適合性の原則に沿わないと考えられるため新NISAは向いていません。
- 含み損を抱えている人
投資歴が長く、個別株式や投資信託を保有していて塩漬け(長い間評価損になり心理的に売れない状態)になっている場合、新NISAは向きません。むしろ、一般口座や特定口座を通じて何らか投資で利益を出して、塩漬け銘柄を売却した損失と損益通算をすることで結果として新たな投資成果を非課税にしたり、非課税に近づけることができます。含み損を抱えている人は新NISAではなく、通常の一般口座、特定口座での取引が向いているでしょう。
4: 新NISAを活用するためのポイント
ここでは、新NISAを最大限に活用するためのポイントを解説します。どのように投資戦略を立てるべきか、またファイナンシャルプランナーとの相談の重要性についても触れます。
NISAの活用法
・単身世帯の積極的な積立て
単身世帯で家族のための資金使途が無い人は、積極的な投資を目指すのも1つです。積極的な積立てとは、全額株式投資信託に投資するイメージです。反対に消極的に投資したい人はバランス型投資信託を選択するといいでしょう。まずは自分のリスク許容度を計測するといいでしょう。
・リタイヤ世帯の安定的な運用
まとまった退職金や手元にあるまとまった資金の運用の場合、そもそも新NISAが適しているかどうかを検討する余地がありますが、バランス型投資信託などリスクの低い投資信託を選択するといいかもしれません。もしかすると、新NISAをやらないほうがいい、という結論になる場合もあります。
・生命保険との併用
学資保険ではなく、掛け捨ての収入保障保険と新NISAでの10~20年積立というかけ合わせで保険と投資を分離させて、双方効率的に備えるという方法論があります。ただ、絶対に減らせないお金ですので預貯金に置いて守りに徹する方が心理的に安全性が高いことは言うまでもありません。
投資戦略
・リターンの最大化
リターンを最大化させたい場合は、過去5~10年、あるいはそれ以上の長期間の年率リターンが高い投資信託を買うことで将来のリターンを最大化できる可能性があります。ただし、直近5年程度では価格の上昇が異常と思えるほど高いため、10年から10年超の投資成果が高い投資信託の方が、安心してお金を投じることができるかもしれません。
・コア・サテライト戦略
安定的な利益を獲得できる投資信託と積極的な利益を狙う投資信託を組み合わせます。例えばコアに7割、サテライトに3割といった具合です。コアに該当する投資商品は新NISAであればインデックスファンド、サテライトであればアクティブファンドに相当するかもしれません。もしくはコアにバランス型投資信託、サテライトにインデックスファンドといったような組み合わせでもいいでしょう。守り7割、攻め3割、資産の2/3がコア、1/3がサテライトでもいいでしょう。
・リスク・パリティ戦略
リスクが均等になるように投資信託を選定します。必然的にハイリスクの株式投資信託が少なくなり、ローリスクの債券投資信託の比重が増えます。外国株式投資信託、日本株式投資信託、外国債券投資信託、日本債券投資信託、不動産投資信託など金額を割り振ることで金額×リスクが同等になるように配置する投資戦略です。リスク・パリティの考え方は様々ありますので、解釈の相違がありましたらご容赦ください。
・GPIF追随
日本の公的年金である年金積立金管理運用独立行政法人のポートフォリオをまねるやり方です。年金積立金管理運用独立行政法人は不定期に資産配分を変更しますが、現状は外国株式投資信託、日本株式投資信託、外国債券投資信託、日本債券投資信託をそれぞれ25%とする分け方で運用しています。ベンチマークとなる資産配分がわかると、リバランスといって定期的な運用配分のリフレッシュがしやすいのでお勧めです。ただし、リバランスをしない方がいい場合もありますので、実施に当たっては金融リテラシー並びに投資理論に対する理解が必要と考えます。
・オールシーズンズポートフォリオ追随
どんな景気や株価動向でも損失を抑えて利益を追求する資産配分としてオールシーズンズポートフォリオ、オールウェザーポートフォリオという考え方があります。詳しくは、ヘッジファンド「ブリッジウォーター」の伝説的創業者レイダリオ氏の書籍の購読をお勧めいたします。
・バランス型特化
リスクを抑えたい人はバランス型投資信託を買う、というとてもシンプルな戦略です。利益はそれほど獲得できませんが、安定したつみたてや一括投資ができることでしょう。
・アドバイザーの確保
私たちがIFAだからというわけではなく、投資にはアドバイザーが不可欠です。新NISAの場合、始めの積立て開始時点ではアドバイザーが不要に思われがちですが、実際に積み立てが始まると「思うように利益が出ない」「思っていたのと違う」「これからどうすればいい?」など大切なお金のこと、自分だけで決めたために相談先がないという事態が想定されます。これはほとんどの人に当てはまります。ネットで情報を調べるのもいいのですが、もっと良い選択肢であったり、自分の状況に合ったアドバイスが必要な人の方が多い印象です。J-FREC(金融経済教育推進機構)のアドバイザーは個別銘柄の推奨や選定ができませんので、IFAを中心とした専門家の知見を活用した方がいい場合があります。※IFAのレベルにもよります。
5: まとめ
新NISAは、長期的な資産形成や税金対策に優れた制度ですが、すべての人に向いているわけではありません。自分の投資目的やリスク許容度に合わせて、新NISAを活用するかどうかを慎重に検討しましょう。
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